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第2章 光電粒子理論での説明

 光の速度 C は多くの精密な測定実験で一定値 C0 (光速度定数 ) が得られています。そして光速度が C0 以外であった実験はありません。やはり光速度は一定値で不変なのでしょうか。光電粒子理論では光速度は一定ではないという前提ですから、その立場ではどのような理由が考えられるでしょうか。そして特殊相対性理論を裏付ける多くの実験や事象が光電粒子理論ではどのように説明されるか見ていきましょう。

1.光の速度がすべて一定値で観測される理由

光のの速度がすべて一定値で観測される理由


地球に飛来する光とレンズを透過反射した光

図1 地球に飛来する光とレンズを透過・反射した光
(左図は屈折望遠鏡、右図は反射望遠鏡)


 

 光は物質にあたって透過、反射、吸収されます。望遠鏡で天体観測することを想定しよう。地球に到達する速度C1 = C0 + V の光は望遠鏡のレンズに入射します。ここで地球に到達する光を添字の1、望遠鏡のレンズを透過した光を添字の2であらわします。 V は相対視線速度です。光はレンズを透過するとき何の作用をすることなしにただすり抜けているわけではありません。レンズの原子に衝突し原子をそれに応じた振動数で振動させてレンズは二次的な光源となり再放出します。再放出光の速度は光速度定数 C0 に光源となるレンズと観測者(作用点)の相対視線速度 ±V を足したものになります。レンズと観測者の相対視線速度 V は ±0 ですから再放出光の速度は C0 になります。つまり地上での光は、すべてが C から C0 に変換されて再放出されます。光速度測定装置においてもレンズや反射鏡を用いるので外部から C の光が入射したとしても C0 に変換されます。このことが光速度の測定値がすべて C0 である理由です。なお、望遠鏡レンズを例に挙げましたが、大気においても同様な作用が起きています。



2.マイケルソン・モーレーの実験

マイケルソン・モーリーの実験の説明

 干渉計は光源、反射鏡、ハーフミラー、干渉縞観測用望遠鏡等の光学機器で構成されています。光源を含む干渉計の各機器において相互の距離 r が一定で dr / dt = 0 ですから静止しています。従って二次的な光源となる光学機器から放射する光速度は光速度定数 C0 です。装置全体が慣性系 K に対して V で運動しているときも干渉計内の光速度は装置に対してあらゆる方向どの部分でも C0 となるので光速度の違いが検出されるはずがありません。 相対性理論は、光学機器とは無関係にあらゆる慣性系で光速は一定であるとしました。このことでもマイケルソン・モーレーの実験結果を矛盾なく説明できたのでした。しかしそのために空間と時間は一定不変ではなく運動により空間が短縮し、時間が遅れるとした新しい考え方を導入する必要がありました。光電粒子理論ではそのような常識的には理解が難しい条件を設けることなくシンプルに矛盾なく説明できるのです。

 ここまでにお気づきになられたと思いますが、光電粒子理論では、異なった慣性系 K 系と K’系で物理的な現象の違いは一切なくそのような考察は不要です。相対性理論に登場するローレンツ変換は不要であり、空間の短縮や時間の遅れも起きません。また媒質は必要ないので過去に議論されたエーテルなどを持ち出すことも無意味です。



3. 高速パイ中間子ならびに高速電子から出たガンマ線の速度

 特殊相対性理論の決定的な証拠の1つとされるのが、1964年スイスの CERN で行われたπ(パイ)中間子から放射されたガンマ線の速度測定実験です(図1)。陽子シンクロトロンで加速された陽子をターゲットのベリリウムに衝突させると準光速で運動する π0 中間子が生成します。 π0 中間子の寿命は短く、崩壊してガンマ線を放出します(π0→2γ)。 π0 中間子の速度を V として、ガンマ線速度を C = C0 + kV としたとき、単純な速度合成式では K =1 となりそうですが実験結果は k = (-3±13)×10-5 が得られました。誤差の範囲でガンマ線の速度 CC0 に等しかったのです。

光電粒子理論ではどのような解釈になるのでしょうか。

光の放射機構は

 ①原子内電子や自由電子が振動することによる発光

 ②原子内電子が励起してそのエネルギー準位差に起因する特有の振動数の光を放出する励起光放射

 ③荷電粒子が磁場等でまげられて光を放射する制動放射 

 ④荷電粒子の速度が媒質中の光速度を超えるときに放射するチェレンコフ光

があります。①と②は原子の運動速度に光の速度がガリレイ変換で速度合成されて C = C0 + kV となります。しかし、③の制動放射は光源の運動速度にかかわらず C = C0 になります。制動放射によって放射された光の場合、速度の合成則は成立しません。制動放射光の速度がそのようになるのは光電粒子電磁方程式から導かれる必然であってそのことは第3章で述べます。

 第1にはこのように放射機構により光の速度が異なることに留意すべきです。 π0 中間子が崩壊してガンマ線を発生させる機構は①から④のどのタイプにも属さないもので、準光速の π0 中間子から放射するガンマ線が C0 のおおよそ2倍ではなく光速 C0 であることは制動放射の例のようにありえることです。第2にはガンマ線は加速器の取出し窓を通過してから測定機に入射しています。取出し窓は薄いベリリウムでできており、ここでガンマ線がベリリウム原子と衝突し、速度C0 のガンマ線を再放射することは可視光線の場合と同じです。したがって CERN の実験を特殊相対性理論の証拠とする理由にはなりません。

ガンマ線の速度測定実験

図1  ガンマ線の速度測定実験


 続いて、1973年にスタンフォード大学の線形加速器(SLAC)を用いて行われた放射光(可視光)とガンマ線の速度比較実験を見てみましょう(図2)。ほぼ光速度に近い電子をターゲット T に衝突させて高エネルギーのガンマ線を発生させてセンサー S1と S2 の間の通過時間を測定しました。次に高速電子線を磁石 M によって軌道を曲げることでシンクロトロン放射光を発生させて同様に通過時間を測定し、それぞれの速度を比較したのです。ガンマ線と放射光の速度差は

ガンマ線速度- 放射光速度) / (放射光速度)=(1.8±6)×10-6 ≒ 0

振動数が大幅に異なる可視光とガンマ線で両者の速度に違いはなかったのです。光速度は一定値でそれを超えるものは存在しないとする特殊相対性理論を支持する結果でした。

放射光とガンマ線の速度比較実験

図2 放射光とガンマ線の速度比較実験 


光電粒子理論ではどのような解釈になるでしょうか。

①ガンマ線の速度:静止しているターゲットから放射されたので C0
②放射光の速度 C :磁場で方向が曲げられる前の電子は準光速なので、ほぼ 2C0 となるように思われますが、そうではありません。光電粒子電磁気理論では制動放射によって放射された光の速度は先に述べたように光源の運動にかかわらず C0 になります。
このことから SLAC の実験でもガンマ線とシンクロトロン放射光の速度差はほとんどなかったのです。




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