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6.ドップラー効果 

 光源と作用点に相対速度があるとき、物質との衝突によって再放出する光の振動数が変化します。

光電粒子理論と相対論のドップラー効果の比較


振動数の変化は (1) 式であらわされます。図 1に恒星からの光を地球で観測するときの入射速度と透過速度、反射速度の関係を示します。このとき光源と作用点のどちらが動いていてどちらが静止しているかは意味がなく、2 点の相対的な速度のみに意味があります。相対性理論によれば振動数の変化は (2) 式であらわされますが、地球上で観測する速度の多くは C0V ですから β2 は無視することができ φ = 0 のとき (3) 式となり、(1) 式と同じになります。しかし宇宙では 大きな速度を示す現象があり、図2および図3に示すように光電粒子理論と相対性理論で無視できない相違が出ます。(1) 式は光電粒子電磁気学から導入されるものであって 第3章 にて示します。


① 運動する恒星からの光

恒星からの光を地球で観測するときの速度

図1 恒星からの光を地球で観測するときの速度
(左図:透過光のとき、右図:反射光のとき) 

 恒星からの光は様々の速度で地球に飛来しています。地球に対して視線速度 VC で運動している恒星から飛来する光の速度は C1C0 + VC です。大気や地上の望遠鏡の対物レンズ、電波望遠鏡のパラボラアンテナなどの物質に衝突することで再放出する光の速度はC0 に変換されます。このようにして地上で観測する光はすべて光速度定数の速度なのです。衝突の前後で速度の違いがあるときの振動数偏移量は 1±β となります。
ここで βVC/ C0 で、符号は近づくときは+、遠ざかるときは-です。

運動鶴恒星からの光のドップラー効果

図2 光源と観測点が近づくとき          図3 光源と観測点が遠ざかるとき


② スピードガンなどの例 

 電磁波は振動数の低い光なので同様に振動数偏移を起こします。マイクロ波を用いた速度計の場合を見てみましょう。発信機と受信機が静止しており、移動する物体(自動車や野球のボールなど)にマイクロ波を照射し反射した電磁波の振動数偏移量から速度を知ることができます。

スピードガンのドップラー効果

 

 自動車が接近したときのドップラー偏移を図4に示します。恒星からの光の場合と違うのは、反射することで光速度の変化が2回生じることです(1回目は発信波が自動車に当たったときでC0 → C0 + VC に、2回目は反射波が受信機に当たったときで C0 + VCC0 )。

光電粒子理論と相対論は完全に一致


自動車が接近してくるときの光速度、振動数の推移

図4 自動車が接近してくるときの光速度、振動数の推移 


 相対論の (8)式は厳密式ですが (9)式は近似式です。では互いの厳密式である (5) 式と (8) 式の違いはどのように検出できるでしょうか。
近づいてくる飛行機の場合を想定し、速度を300 m/s とします。光電粒子論と相対論との差は受信する振動数は 30 GHzのマイクロ波レーダー波の場合 0.03 Hzです。 500 THz の可視光線を用いた場合は 500 Hzです。これらを検出できる精密な光源と干渉計を用いれば理論の検証が可能になるでしょう。 


③ 横ドップラー効果

 (2)式で COSφ =0 のとき(運動方向に直角のとき)も振動数偏移があり、H.E.Ives および C.R.Stilwell が1938年に実験により検証しました。このことが相対性理論の正しさを裏付けているとされています。しかし横ドップラー効果の測定は極めて困難であり、光電粒子理論の立場では再度の検証が必要です。 

④相対論的ドップラー効果の検証実験
-マッカーサー(D.W.MacArthur)らの実験ー

 光のドップラー式は
ドップラー効果の振動数偏移

ではなく、相対論的ドップラー式
相対論的ドップラー効果の振動数偏移

が正しいとされています。(2)式は多くの実験で正しいことが検証済みですという読者の声が聞こえてきそうです。では本当にそうでしょうか。正確な実験とされているマッカーサーらの論文を見てみましょう。
(“Test of the Special-Relativistic Doppler Formula at β=0.84,” Phys.rev.Letts.,vol.56,1986)

 実験の概要は以下の通りです。米国ロスアラモス国立研究所の陽子ライナックで生成した β=0.84 という光の速度に近い高速水素原子を紫外線パルスレーザーによって励起し、ライマン遷移スペクトル線のエネルギーを測定したのです。

ドップラー効果のエネルギー変化

ここで E’:遷移光のエネルギー、E0 :基底状態のエネルギー、g0:特殊相対性理論との差異を表す係数、理論通りであれば g0=1、θ:高速水素原子と遷移放射光との角度


相対論的ドップラー効果の検証実験概要図

図5 実験の概要図

角度θを変えて実験を行い、結果は g0=1.00004 であり2.7×10-4 の精度で特殊相対性理論の予測と一致したとしています。

しかしこの論文は以下の点で疑問があります。

相対論的ドップラー効果の検証には波長(または振動数)の変化を定量的に明らかにしなければなりませんが、遷移放射光のエネルギー E' を測定しています。E =  式から E' でも原理的には良いのですが、通常は波長を測定した方がはるかに高い精度を得られます。それはよいとしても E' を測定するカロリーメーターについて型式、原理、精度などの開示がありません。そしてその肝心なエネルギー測定データについて論文内に全く開示がありません。(3)式を用いるのであれば遷移放射光のエネルギー測定値は必須でありそれなくしてドップラー効果を検証することはできません。



 このように相対論的ドップラー効果を正確に検証したとされる実験でも疑問符がついてしまうのです。







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