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8. 星の年周光行差 

 地球の公転運動により、すべての恒星が一様に年間 40 秒 運動の方向に変位して見えます。恒星は固有運動しており、その視線速度は様々であるのにかかわらず、一様な運動しているように見えるのはどのような理由が考えられるでしょうか。

年周光行差の説明図

図1  年周光行差の説明図 


 恒星からの光速度 CV1 を恒星の視線速度とすれば C = C0 + V1 であり V2 を地球の公転速度 (図1) として年周光行差 (θ'-θ) は以下の式で表されます。

年周光行差式

 上式は三角形 ABC の速度ベクトルを三角関数の正弦公式を用いることで容易に導かれます。
地球の公転速度 V2 = 30,000 m/s 、恒星の視線速度 V1 を 0 としてC = C0 = 3×108 m/sとすれば (θ'-θ) は 約 21 秒になります。ここで恒星の視線速度V1 を 0 としたのは、望遠鏡の対物レンズに衝突して観察者の目に入るときには C = C0 + V1 の光速度は C = C0 になるためです (図2)。恒星の固有運動は年周光行差に関係しないことが明らかです。

光電粒子理論と相対論での年周光行差の比較

 媒質中の光速度は屈折率を n として、C0/n となります。ブラッドリーが光行差を発見したのち、水を通過させて星を観察すれば水の屈折率は約 1.3 なので、(1) 式で光速度 CC0/1.3 となり年周光行差は変わるだろうと考えられました。しかしエアリーが1871年に望遠鏡の鏡筒を水で満たして行った実験によって、光行差は変化しないことがわかりました。このことは真空中の光速度(ほぼ空気中の光速度に等しい)は常に一定であるとする相対性理論を支持するものでした。


 光電粒子理論ではどうでしょうか。鏡筒から接眼レンズを通過して出た光の速度は、再び C0 となり (図3) 、光行差に変化がでないことが明らかです。 

通常の望遠鏡を通過した光の速度

図2 通常の望遠鏡を通過した光の速度 

水を満たした望遠鏡を通過した光の速度

図3 水を満たした望遠鏡を通過した光の速度  





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